年齢を重ねると筋膜の柔軟性はどのくらい落ちるのか?戻せるのか?

こんにちは。神谷町の筋膜ケア専門院【拝志フィジカルセラピー ファシアラボ】です。
「年を取ると体が硬くなった気がする」「昔はもっと動けたのに…」そんな声をよく耳にします。
実はこの「硬くなる」感覚の正体には、**筋膜(ファシア)**の変化が深く関係しています。
今回は、「年齢と筋膜の柔軟性」の関係について、わかりやすくお伝えします。

1. 年齢とともに筋膜の柔軟性はどう変化するのか?

結論から言えば、年齢とともに筋膜の「水分量」と「すべり(滑走性)」は確実に低下します。
ただし、これは「老化」だから仕方ないという話ではありません。
実際には、使い方と回復のバランスが崩れていくことで起こる変化です。

▶ 筋膜の中では何が起こっているのか?

筋膜は主に3つの成分でできています。

  1. コラーゲン繊維:体を支える強さをつくる
  2. エラスチン繊維:伸び縮みを担う
  3. 基質(グラウンドサブスタンス):水やヒアルロン酸などで構成される潤滑ゲル

この「基質:きしつ」は、筋膜のしなやかさを保つうえでとても重要な要素です。
ところが年齢とともに、この水分保持力が低下して**“潤ったゲル状”から“乾き気味のゼリー状”**へと変化していきます。
その結果、筋膜どうしのすべりが悪くなり、体の動きが少しずつ重く、粘つくような感覚になります。

▶ 「硬い」よりも「しなやかさが失われる」

たとえるなら――

  • 若いころの筋膜は「水をたっぷり含んだスポンジ」。押してもすぐに戻ります。
  • 年齢を重ねた筋膜は「乾き気味のスポンジ」。押しても形が戻りにくくなります。

つまり、「硬くなる」というより、**“しなやかさを失って動きが鈍くなる”**のです。

2. どのくらい柔軟性が落ちるのか?

研究では、「コラーゲンの架橋(かきょう)」と呼ばれる現象が進むことで、
40代以降から筋膜の弾力が急激に低下することがわかっています。

  • 20代:しなやかで伸びやすい
  • 40代:すべりや伸びが2〜3割減少
  • 60代:弾力が半減し、回復にも時間がかかる

ただし、これはあくまで平均的な数値です。
実際には「よく動かす人」と「動かない人」とでは、柔軟性に数倍以上の差が出ます。

つまり、年齢そのものよりも、「日常の身体の使い方」が筋膜の状態を左右するのです。

3. 柔軟性は“戻せる”のか?

答えは――はい、戻せます。
年齢に関係なく、適切な刺激と時間をかけることで、筋膜の弾力とすべりは回復します。

▶ 回復のメカニズム

当院で行うマイオファッシャル・リリース(Myofascial Release; MFR)は、
筋膜にゆっくりとした持続的な圧をかけ、90秒以上かけて深層まで解放していく手法です。

このとき、筋膜の中では「ゲル⇄ソル転換」という現象が起こります。
難しく聞こえますが、簡単に言えば――
乾いたゼリーのような状態が、水分を取り戻して滑らかになるということです。

ゾル状
ゲル状

続けていくと、

  • 筋膜のコラーゲン繊維が整い直し
  • 滑走層が再び動き出し
  • 弾力と柔らかさが戻る

といった変化が少しずつ起こります。
つまり、筋膜は「生きた組織」なので、何歳でも再生できるのです。

4. 実際にどれくらいの期間で変化するのか?

MFRを受けると、多くの方が1回目から「軽くなった」「動きやすい」と実感されます。
ただし、本当の意味で筋膜が変わり、柔軟性が“定着”するには、ある程度の時間が必要です。

期間起こる変化内容
13回(初期)一時的なすべり改善水分バランスの回復・神経の緩み
48回(中期)ファシア層の再構築癒着がほどけ、全体の動きがつながる
23ヶ月(長期)柔軟性の定着コラーゲン線維が再配列し、弾力回復

また、日常でのセルフケア(軽いストレッチ・温め・呼吸)を組み合わせると、
再生のスピードはおよそ2〜3倍早く
なります。

5. ファシアの「年齢」はカレンダー年齢ではない

ここがとても大事なポイントです。
筋膜には、「実年齢」よりも「使い方年齢」があります。

70代でも柔軟に動ける方がいる一方で、
30代でもデスクワーク続きでガチガチな方も少なくありません。

つまり、筋膜は**“使えば若返り、放っておくと老ける”**組織。
毎日の動き方や姿勢のクセが、そのまま「ファシア年齢」を決めているのです。

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6. まとめ ― 筋膜の柔軟性は「取り戻せる」

ポイント内容
年齢で硬くなるのは自然な現象水分保持力とすべりの低下による
でも「戻せない」わけではないMFRによる再潤滑化で改善可能
柔軟性は“動かすほど若返る”日常の姿勢・温め・呼吸がカギ
実年齢より“ファシア年齢”が大切使い方しだいで身体は変わる

最後に ― ファシアは「再生する組織」

マイオファッシャル・リリースの創始者、ジョン・F・バーンズ氏はこう語っています。

“Fascia is a living tissue — it can deform, heal, and reorganize.”
ファシアは生きた組織であり、形を変え、癒し、再構築する力を持っている。

年齢を重ねても、身体は常に回復へ向かおうとしています。
筋膜ケア(ファシアケア)は、その「再生スイッチ」を入れる方法。

もし「最近体が動きづらい」「前より疲れやすい」と感じたら、
それは筋膜からのサインかもしれません。
今からでも遅くありません。


あなたの身体は、ちゃんと変われます。


そのお手伝いができたら幸いです。

慢性腰痛や背中の凝りを根本から改善したい方は、

神谷町駅徒歩1分のファシアラボ

直接ご予約できます。

投稿者プロフィール

拝志陽介
拝志陽介拝志フィジカルセラピー代表
私が「筋膜(ファシア)」に注目するようになったのは、オーストラリアのカイロプラクティック大学で学んでいたとき、自分自身が背中の痛みや頭痛に悩まされたことがきっかけです。
その痛みの原因が「筋膜」にあることに気づき、出会ったのが、筋膜に振動刺激を与えてアプローチする「マイオセラピー」でした。
自分の身体でその効果を実感できたからこそ、この施術法は自然と、私の施術の中心になっていったのです。