ストレッチは「筋肉を伸ばしている」のか?
こんにちは。神谷町の筋膜ケア専門院【拝志フィジカルセラピー ファシアラボ】です。
慢性腰痛や背中の凝りで悩んでいる方から、よくこんな質問を受けます。
ストレッチを続ければ、硬い筋肉はちゃんと伸びますか?
多くの方は、ストレッチとは「縮んだ筋肉を伸ばすこと」だと考えています。かつてはそれが一般的な理解でした。硬い筋肉が短くなっているから、それを引き伸ばせばよい。とても分かりやすい説明です。
しかし、現在のファシア研究では少し違った見方がされています。
筋肉は単独で存在していない
私たちの身体は、筋肉だけでできているわけではありません。筋肉はファシアと呼ばれる結合組織のネットワークに包まれ、全身でつながっています。
この考え方を広めたのが、アナトミートレインという全身の張力連鎖モデルを提唱した Thomas W. Myers です。身体はパーツの集合ではなく、張力でつながる一つのシステムであるという視点です。
また、ファシア研究者の Robert Schleip は、ファシアが単なる膜ではなく、多くの感覚受容器を含む高度な感覚器官であることを示しました。
つまり、可動域が狭い原因は単純な筋肉の短縮ではなく、神経系や結合組織全体の状態にある可能性が高いのです。
では、今の見解でストレッチは何のために行うのでしょうか。

1 神経系の再学習
現在もっとも有力なのは、神経系の再学習という考え方です。
ストレッチで起きている変化の多くは、組織の長さそのものが変わることではありません。むしろ、神経がその動きを安全だと認識することです。
伸ばされても危険ではない
その可動域は安全である
その方向に動いても損傷しない
こうした再学習が起きています。
つまりストレッチは、長さを変える行為というより、安全性を教える行為です。
当院で大切にしている、超低刺激で脳に動いて大丈夫だと認識させるという考え方とも一致しています。
2 ファシアの粘性と水分への影響
ファシアはコラーゲン線維だけでなく、ゲル状の基質を含んでいます。そこにはヒアルロン酸などが存在し、組織同士の滑りやすさに関わっています。
ストレッチや軽い運動によって
組織内の水分移動が促される
一時的に粘りが低下する
層同士の滑りが良くなる
といった変化は起こり得ます。
ただし、構造そのものが大きく物理的に伸びるほどの変形は起きていない、というのが現在の主流見解です。
ファシアが大きく引き延ばされて形が変わるというよりも、滑りやすい環境が一時的に整うという理解の方が近いです。
3 張力の再配分
身体は全体でバランスを取っています。ファシアは張力ネットワークとして機能し、どこかを伸ばすと全体でバランスを取り直します。
ストレッチは局所の張力を一時的に変化させ、全体の張力分布を再配分します。
当院でよく使う言葉で言えば、張力再配分です。
ただしこれは一時的な変化であり、根本的な再構築には、日常の使い方の見直しや再教育が不可欠です。

4 痛みを和らげる神経効果
ストレッチには短期的な鎮痛効果もあります。
下行性疼痛抑制系の活性
安心感による自律神経の調整
リズム運動による神経調整
こうした神経の働きが関与しています。
慢性疼痛では、この神経調整の効果が非常に重要です。
その意味では、ストレッチは組織操作というより、神経操作に近いと言えます。
ストレッチはやるべきか
答えは、目的を間違えなければ有効です。
間違った目的は
固まった筋肉を無理やり伸ばす
可動域を強引に広げる
痛い場所を強く伸ばす
伸ばせば治ると信じ込む
こうした方法は神経過敏を助長し、かえって悪化することもあります。
一方で、現在の研究的な目的は
神経系に安全性を教える
張力バランスを微調整する
水分動態を促す
動く前の準備をする
というものです。
つまり、ストレッチは治療そのものではなく、環境調整です。
ファシア視点での再定義
ファシアの視点で再定義するなら、ストレッチはファシアを無理に伸ばすためではありません。
ファシアが安心して動ける状態を作るために行うものです。
身体は壊れているわけではなく、守っていることが多いのです。
その守りを少しずつ緩め、信頼を取り戻していく。その一つの方法としてストレッチがある、と考えると分かりやすいでしょう。
慢性腰痛や背中の凝りを根本から改善したい方は、神谷町駅徒歩1分のファシアラボへ
投稿者プロフィール

- 拝志フィジカルセラピー代表
-
私が「筋膜(ファシア)」に注目するようになったのは、オーストラリアのカイロプラクティック大学で学んでいたとき、自分自身が背中の痛みや頭痛に悩まされたことがきっかけです。
その痛みの原因が「筋膜」にあることに気づき、出会ったのが、筋膜に振動刺激を与えてアプローチする「マイオセラピー」でした。
自分の身体でその効果を実感できたからこそ、この施術法は自然と、私の施術の中心になっていったのです。
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