ファシアを知るシリーズ 筋膜研究は今どこまで進んでいる?

― わかっていること、まだ仮説のこと ―

こんにちは。
神谷町の筋膜ケア専門院【拝志フィジカルセラピー ファシアラボ】です。

ここ10〜15年で、「筋膜(ファシア)」という言葉は一気に広まりました。
しかし実際のところ、研究はどこまで進んでいるのでしょうか?

今日は、

  • 科学的にほぼ確立していること
  • 有力だがまだ発展途中のこと
  • まだ仮説段階のこと

を整理してお伝えします。

① ほぼ確立していること(コンセンサスがある領域)

1. 筋膜は全身を連続する三次元ネットワーク

かつて筋膜は「筋肉を包む膜」と考えられていました。
しかし現在では、筋膜は全身を連続する結合組織ネットワークであることが解剖学的に確認されています。

この連続性をわかりやすく示したのが
Thomas W. Myers
のアナトミートレイン理論です。

もちろん“ライン”そのものは概念モデルですが、
筋膜が構造的に連続していること自体は確立した事実です。

2. 筋膜は神経が非常に豊富

筋膜は“感じる組織”です。

研究では、

  • 自由神経終末
  • 侵害受容器
  • 固有受容器

が豊富に存在することが示されています。

特に
Robert Schleip
の研究グループは、筋膜が痛みに関与する可能性を示しました。

これはほぼ確立している領域です。

慢性痛が「骨」や「筋肉」だけで説明できない理由がここにあります。

3. 筋膜は粘弾性組織である

筋膜はコラーゲンだけでなく、

  • エラスチン
  • ヒアルロン酸

を含む粘弾性組織です。

滑走性の低下(densification:「デンシフィケイション」)が起こると、
動きの制限や痛みに関与する可能性があることも研究されています。

「筋膜は動く組織である」
これは現在ほぼ確立しています。

② 有力だが発展途中の領域

ここからが面白いところです。

4. 筋膜は収縮する?

近年、筋膜内に“筋膜線維芽細胞(myofibroblast)”が存在し、
一定の収縮能力を持つことが報告されています。

ただし、

  • 日常レベルでどれほど機能的影響があるのか
  • 痛みとの因果関係

はまだ完全には解明されていません。

可能性は高いが、研究継続中の領域です。

5. 全身の張力連鎖はどこまで臨床的意味を持つか?

テンセグリティ理論は非常に魅力的です。

しかし、

  • 張力がどこまで遠隔に影響するのか
  • どの程度が臨床的に意味を持つのか

は、まだ数値的に明確とは言えません。

モデルとしては有力。
しかし“どのくらい影響するか”は研究途中です。

③ まだ仮説段階の領域

ここは慎重に扱う必要があります。

6. 水の第四相と筋膜機能

Gerald Pollack
が提唱した「水の第四相(EZ water)」理論。

細胞周囲の水構造が機能に影響するという仮説は非常に興味深いですが、

  • 筋膜臨床との直接的因果関係
  • 治療効果との明確なエビデンス

はまだ十分とは言えません。

臨床家の間では注目されていますが、
科学的には発展段階です。

7. “全ての慢性痛は筋膜由来”という主張

これは明確に言えます。

科学的には言い過ぎです。

慢性痛は、

  • 神経系
  • 免疫系
  • 心理社会的因子
  • 中枢感作

が複合的に関与します。

筋膜は重要な要素ですが、
“単独原因”とするのは現在の科学では支持されていません。

では、筋膜研究の現在地とは?

整理するとこうなります。

解剖学的連続性 → 確立

神経豊富な組織 → 確立

粘弾性と滑走性 → 確立

△ 張力遠隔連鎖の影響度 → 研究途中

△ 筋膜収縮の臨床意義 → 研究途中

△ 水構造理論 → 仮説段階

筋膜研究は“初期ブーム”を越え、
今は検証フェーズに入っています。

拝志フィジカルセラピーとしての立場

私はこう考えています。

✔ 科学的に確立している部分を土台にする
✔ 仮説は仮説として扱う
✔ 臨床で再現性のある方法を優先する

慢性腰痛や背中の凝りは、
単一理論で説明できるほど単純ではありません。

しかし筋膜という視点は、
「画像では説明できない痛み」を理解する大きな鍵になっています。

まとめ

筋膜研究は今、

  • 基礎解剖学と神経学はかなり進んだ
  • 機能連鎖の定量化は進行中
  • 水構造やエネルギー理論は仮説段階

という位置にいます。

ブームではなく、
静かに科学として成熟している途中。

それが現在地です。

改善したい方は、神谷町駅徒歩1分のファシアラボ

投稿者プロフィール

拝志陽介
拝志陽介拝志フィジカルセラピー代表
私が「筋膜(ファシア)」に注目するようになったのは、オーストラリアのカイロプラクティック大学で学んでいたとき、自分自身が背中の痛みや頭痛に悩まされたことがきっかけです。
その痛みの原因が「筋膜」にあることに気づき、出会ったのが、筋膜に振動刺激を与えてアプローチする「マイオセラピー」でした。
自分の身体でその効果を実感できたからこそ、この施術法は自然と、私の施術の中心になっていったのです。