腰痛治療の外科的処置の考察

こんにちは。神谷町の筋膜ケア専門院【拝志フィジカルセラピー ファシアラボ】です。

本日は少し難しいと感じるかも知れませんが「腰痛治療の外科的処置の考察」というテーマでお話しします。

腰痛で悩まれている方の中には、手術を受けた経験がある方、これから手術を検討している方もいらっしゃると思います。

手術で良くなる方も確かにいます。しかし一方で、こんな声も少なくありません。

「手術直後は良かった。でも数年後にまた痛くなった」

なぜこのようなことが起きるのでしょうか。今日はその背景を、できるだけわかりやすく整理していきます。

腰痛手術が数年後に失敗に見える理由

まず大前提として、手術が間違っているという話ではありません。必要なケースでは、手術はとても大切な選択です。

ただし慢性腰痛の場合、痛みの背景は一層ではなく、いくつかの層が重なっていることが多いのです。

痛みの回路が戻るという問題

手術では、炎症や圧迫などの局所の問題を取り除くことがあります。これにより痛みの入力が減り、術後は楽になります。

しかし慢性的な痛みでは、体だけでなく神経の敏感さも関係しています。長く痛みが続くと、神経は過敏になり、少しの刺激でも強く反応するようになります。

さらに睡眠不足、ストレス、動くことへの不安、長時間の座り姿勢などが続くと、神経の回路は再び強まりやすくなります。

つまり、手術で局所が変わっても、痛みを感じやすい神経の状態が変わらなければ、数年かけて痛みが戻ることがあるのです。

張力と動作の再配分が起きていない

私がとても重要だと考えているのが、体の張力の再配分です。

日常の姿勢、呼吸の仕方、立ち方、歩き方、座り方。こうした習慣が変わらないままだと、同じ部位に負担が集中し続けます。

手術で一部の構造が変わっても、動き方が変わらなければ、再び同じ場所、もしくは隣の場所に負担が集まります。

これは構造の問題というより、体の使い方の問題です。

無意識にやっていると思いますが、膝が机の下に入らない姿勢は絶対ダメです。

手術が新しい条件をつくる

手術は体にとって大きな出来事です。切開や縫合によって傷跡ができます。

傷跡自体が悪いわけではありませんが、組織の滑らかさや感覚の状態が変わることはあります。

特に脊椎の手術では、隣の関節への負担が増えることがあり、時間差で別の場所が痛くなることもあります。

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自然経過と回復の波

痛みには波があります。悪い時期に手術を受け、その後たまたま波が下がれば成功に見えます。

数年後に波が再び上がれば失敗に見えます。

評価はとても難しいのです。

シャム手術(偽手術)が示した痛みの本質

ここで一つ重要な研究の話があります。実際に切開はするが、本質的な処置は行わない手術の研究です。ちなみにシャム手術とは「見せかけの手術(偽手術)」です。皮膚切開などの手順は真の手術群と同じに行いますが、肝心な治療的介入しない手術のことです。

代表的なのが、変形性膝関節症に対する関節鏡手術の研究です。
整形外科医モーズリーらの試験では、

・実際に関節内を処置した群
・切開のみで実質的な処置を行わなかった群
との間で、主観的な痛みの改善に大きな差が認められませんでした。

この研究は、痛みと構造の関係を改めて考えさせるものとして広く注目されました。

肩のインピンジメントに対して行われる「肩峰下除圧術」という手術があります。
これは、肩の骨の一部を削って、腱がぶつからないようにする手術です。

ところが研究では、

・実際に骨を削ったグループ
・カメラを入れて中を確認するだけで、骨は削らなかったグループ

この2つを比べても、痛みの改善度に大きな差が出なかったという報告があります。

つまり、

「骨を削ったこと」そのものが、必ずしも痛み改善の決定的な要因ではなかった可能性がある

ということです。


脊椎の椎体形成術でも、処置群とシャム手術群で大きな差がなかった研究があります。

これが示しているのは、痛みは単純に構造だけで決まらないということです。

手術という大きなイベント、入院、麻酔、医師からの説明、術後のリハビリなどこうした経験が、脳に安全だというメッセージを与えます。

痛みは体の壊れ具合だけでなく、脳の安全評価でも上下するのです。

これは私が日々感じていることとも重なります。麻酔によって神経の過敏さが一時的に沈む可能性。切開によって組織の張力が変わる可能性。

理論としては矛盾しません。

しかし問題は、それが定着するかどうかです。

手術で良くなる人と戻る人の違い

では、どのような人が良くなりやすいのでしょうか。

まず、明確な神経の圧迫や筋力低下など、構造と症状がはっきり一致している場合です。この場合は手術の効果が出やすいです。

さらに術後に段階的に活動を戻し、体の使い方を再学習している人も安定しやすいです。

一方で戻りやすいのは、画像には異常があっても、実際の問題が神経の敏感さや体の状態に強く関係している場合です。

また、術後に動きを再構築せず、怖くて動かない、あるいは治ったと思って無理をする、負担が掛かる座り方を知らずに続けているなど、こうした極端なパターンも再発につながります。

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そして切開部分が新しい過敏点になり、別の形で痛みが出ることもあります。

手術は局所の条件を変える力は強いです。しかし慢性腰痛に深く関わる、神経の学習や張力の再配分までは自動で変えてくれません。

だからこそ、成功が数年後に失敗に見えることが起きるのです。

私たちの立場

私は手術を否定する立場ではありません。必要なときは必要です。

ただ、慢性腰痛の多くは、筋肉や骨そのものではなく、全身に連続するファシアの状態や神経の敏感さに由来していると考えています。

滑りの悪さ、張力の偏り、水分状態の低下。こうした組織の質の変化が、痛みの背景にあります。

そして痛みは敵ではなく、体からの重要な情報です。

手術をするかしないかの前に、自分の体がどのような状態にあるのかを丁寧に見極めることが大切です。

局所だけを見るのではなく、全体の張力と動作をどう再配分するか。そこに向き合うことで、数年後問題を減らせる可能性があります。

慢性腰痛や背中の凝りを根本から改善したい方は、神谷町駅徒歩1分のファシアラボ

投稿者プロフィール

拝志陽介
拝志陽介拝志フィジカルセラピー代表
私が「筋膜(ファシア)」に注目するようになったのは、オーストラリアのカイロプラクティック大学で学んでいたとき、自分自身が背中の痛みや頭痛に悩まされたことがきっかけです。
その痛みの原因が「筋膜」にあることに気づき、出会ったのが、筋膜に振動刺激を与えてアプローチする「マイオセラピー」でした。
自分の身体でその効果を実感できたからこそ、この施術法は自然と、私の施術の中心になっていったのです。