筋トレからファシア(筋膜)トレーニングへ

神谷町の筋膜ケア専門院【拝志フィジカルセラピー ファシアラボ】の拝志です。

「もっと遠くへ飛ばしたい」「もっと速い球を投げたい」——そのために筋トレをする。

当然の発想だと思う。そして筋トレには確かに効果がある。

ただ、施術家として20年以上体に触れ続けてきた立場から、ずっと気になっていることがある。

筋肉をつければつけるほど、怪我が増えているケースがある。

この記事では、その理由と、私が考える「体の使い方の本質」について書いてみたい。

なぜ筋トレだけでは限界があるのか

プロ野球界でこういうパターンが繰り返されている。

オフシーズンに増量に成功した選手が、翌春のキャンプで肉離れや腰痛、股関節の損傷などで戦線を離脱する。

2016年、フィジカルトレーナーの平山昌弘氏がこう語っている。

「筋トレの弊害ですよ。体幹や股関節などの体の基礎機能を無視して、筋肉のパワーを単体で上げようとしているからケガをする。筋肉の動きは前後・上下・左右の引っ張り合いで連動している。片方だけを鍛えても、結果としてトータルバランスが下がってしまうのです」

プロ野球界に「肉体改造」という言葉を広めた清原和博選手は、本格的なウエイトトレーニング導入後に空振りで筋肉損傷・膝痛を繰り返した。
本人も後に「下半身の強化がおろそかになって、足の怪我が増えた」と話している。

また別の大型選手は、増量を重ねた後に走塁中に腰の痛みで担架で運ばれ、腰椎椎間板ヘルニアと診断された。引退前のオフに17キロの減量、名医への通院、高額な医療用ベッドの購入——できることはすべてやった。それでも改善しなかった。


医師の診断はヘルニアだった。それは正しいと思う。

ただ、施術家としての私の見立ては少し違う。この選手が取り組んでいた大腰筋を中心としたトレーニングが、腰回りの筋肉にアンバランスを引き起こし、ファシアの硬化・拘縮が強く起きてしまった。
それが腰痛につながっている可能性を、私は見ている。
あくまで私の勝手な考えだが、腰痛の多くはそういう構造から来ていることの方が多い。

最近の事例では、オフに5キロ増量して171センチ95キロの体を作り上げた外野手が、春季キャンプ1軍合流当日の練習中に右ふくらはぎを肉離れで離脱した。

元トレーナーはこう語っている。「自分では動ける感覚でも、体がついていけずにケガをすることは珍しくない。体のキレ、しなやかさが失われてしまう」

筋肉は増えた。でも、体は壊れていった。

なぜか。

ファシア(筋膜)という視点

ここに、見落とされている視点がある。

ファシアとは、筋肉・骨・内臓・神経・血管など、体のあらゆる組織を包み込む結合組織のネットワークだ。体全体をつなぎ、動きを滑らかにし、力を伝える役割を担っている。

筋肉への過剰な負荷が続くと、このファシアに変化が起きる。

硬化・癒着・滑走性の低下。つまり、組織間の「すべり」が失われる。可動域が狭くなる。そこに瞬発的な負荷がかかったとき、体は破綻する。

東北大学・早稲田大学の共同研究(英国スポーツ医学誌掲載)でも、筋トレは週130〜140分を超えると健康への好影響が認められなくなり、むしろリスクが高まることが示されている。

「筋トレが悪いではない。」

実は、施術家でさえ知らない人が多い。
ファシア(筋膜)を無視した筋肥大には、「張力破綻」という限界が存在する。
それが故障の正体だ。

山本由伸選手が示していること

ドジャースの山本由伸選手は、ウエイトトレーニングを一切行っていない。

代わりに高校生のころから取り組んできたのが、柔道整復師・矢田修先生が考案した「BCエクササイズ」だ。筋肉をつけることではなく、体全体を正しく連動させることを徹底している。

ウエイトトレーニングをしないにもかかわらず、球速は上がり続け、体も年々大きくなった。本人も「なぜか筋肉が増えている」と話している。

山本選手はこう語っている。

「ウエイトを極めてもすごくいい結果は出ると思う。ただ、僕のトレーニングはそれとは真逆のことをやっているので、同時にやることは不可能なんです」

矢田先生の言葉がある。

「パワー・筋力が付けば強くなるのなら、重量挙げ選手は皆100mを速く走れることになってしまう」

「正しく立てない者は、正しく歩くことはできない。正しく歩けない者は、正しく走れない。正しく走れない者は、正しく投げることはできない」

筋肉の量ではなく、体全体の連動性。
ファシアが柔軟に機能していることで、力は初めて正しく伝わる。

山本選手がここまでの成果を出せたのは、矢田先生の指導があったからだけではない。
高校生のころから真剣に継続してきた本人の姿勢があってこそだ。
矢田先生ご自身も「山本選手がここまで真剣に取り組んでくれたからこそ」と語っている。

ブリッジをする山本由伸選手

ファシアトレーニングという考え方

では、「ファシアトレーニング」とはどういうものか。

筋肉を孤立させて鍛えるのではなく、体全体が連動する動きの中で力を使う。
メディシンボールを投げる、ブリッジをする、ワイヤーを引く——固定した状態での筋肥大ではなく、全身が連動する動きの中でトレーニングを行う。

意識の高いトレーナーはすでにこの方向に動いている。
「筋トレをやる分だけ柔軟性を確保する」「ファシアの滑走性を保ちながら体を鍛える」という考え方が広がってきている。

当院の施術も、この考え方と根を同じくしている。筋肉だけを見るのではなく、ファシアの状態を見極めて、組織間の滑走性を取り戻すことを目標にしている。

筋力としなやかさは、相反するものではない。ファシアを意識することで、両立できる。

一般の方へ——筋トレを否定しているわけではない

最後に、誤解のないように書いておきたい。

この記事で問題にしているのは、筋肥大を目的とした高負荷・低回数のトレーニングを繰り返すことで体に起きる変化のことだ。プロスポーツ選手が「もっと重く、もっと大きく」を追い求める領域の話をしている。

一般の方が健康のために行う筋トレは、まったく別の話だ。

低負荷で回数を多く、無理のない頻度で続けるトレーニングは体を守る。
運動不足の方、筋力が落ちている方にとって、適切な負荷の筋トレはむしろ積極的にやってほしい。
ファシアの柔軟性も保ちやすい。
「体が硬くなるから筋トレをしない」という判断は、この文脈では当てはまらない。

プロスポーツ選手がやっているトレーニングと、一般の方が健康のためにやるトレーニングは、内容も負荷も目的もまったく別物だ。

大切なのは、どんなトレーニングをするにしても「ファシアの状態」を意識すること。
筋力をつけながら、しなやかさも同時に守っていくこと。

竹は嵐の中でもしなやかに揺れ、折れない。硬い枝ほど、折れる。

体も同じだと、私は思っている。

この記事を読んで、

ファシア(筋膜)にご興味のある方はぜひご相談ください。

初回は90分。丁寧に話を聞き、触診で状態を確認してから施術に入ります。

「これは治るんでしょうか」という問いも、一緒に考えます。

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投稿者プロフィール

拝志陽介
拝志陽介拝志フィジカルセラピー代表
私が「筋膜(ファシア)」に注目するようになったのは、オーストラリアのカイロプラクティック大学で学んでいたとき、自分自身が背中の痛みや頭痛に悩まされたことがきっかけです。
その痛みの原因が「筋膜」にあることに気づき、出会ったのが、筋膜に振動刺激を与えてアプローチする「マイオセラピー」でした。
自分の身体でその効果を実感できたからこそ、この施術法は自然と、私の施術の中心になっていったのです。